ソウル・通仁市場~人気のお弁当カフェ&油トッポッキ
 吉村剛史(トム・ハングル)
 2016/07/23 改:2019/05/15 

ソウル・景福宮の西側、この一帯を西村(ソチョン)といいます。朝鮮時代は中人とよばれる中流官吏たちが暮らしており、その後作家や芸術家たちがここに住むようになります。

一方、景福宮の北東にある北村には高級官吏、両班たちが暮らしていました。

西村(ソチョン)は韓国の伝統家屋の韓屋(ハノク)や古い建物が残っているうえ、カフェや飲食店が立ち並んでおり、ここ数年、脚光を浴びています。その一つが、西村の中央に位置する通仁市場(トンインシジャン)なのです。

通仁市場はソウル地下鉄3号線、景福宮駅の出口を出て、北へ歩くこと約10分ほどのところに位置します。西村(ソチョン)の中心に位置するエリアで、景福宮や光化門の見学のあとに訪れてもよいでしょう。

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西村の地図

駅から歩いてくる途中には参鶏湯の名店「土俗村(トソクチョン)」や、「皇后名家(ファンフミョンガ)」もあります。

通仁市場のお弁当カフェ

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通仁市場は日本統治時代、日本人のために市が開かれたのがその始まり。その後、1941年に公設市場として再び始まります。その後、朝鮮戦争後に市場が街の中心になったのです。

2012年1月から始まったお弁当カフェ(トシラクカペ、도시락카페)は、市場で売られている惣菜を少量ずつ購入し、それをご飯とスープとともに食べる、というもの。通仁市場にはもともと惣菜店が多かったことから、このような取り組みがスタート。

これが瞬く間に人気を集めるようになり、週末になると観光客も含め、多くの人でにぎわうようになりました。

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さらに近年、韓国の市場は日本の商店街とも同じように、大型スーパーの力に押されて、衰退化する傾向にあります。そんなんか市場の活性化策のひとつとして知られるようになり、この取り組みをベンチマークしようと、訪れる関係者たちもいるようです。

参考:「大型マートと在来市場」(拙著)、ワウソウルVisit Seoul、市場の掲示等

韓国の市場の惣菜店の話

韓国で生活していた経験もある筆者、トム・ハングルは、市場に出かけるのが好きでした。本場の韓国の食卓を再現したいと思ったら、自分でつくるよりも惣菜を買ってしまうのも一つの手です。

スーパーでは青唐辛子と煮干しの炒め物や、ウズラの卵の煮物など、1パック3,500ウォン程度で売られていますが、一般的な市場の惣菜店では1パック2,000ウォン~3,000ウォンで、販売されています。

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スーパーで買ったお惣菜の例

発泡スチロールに惣菜が入っていて、少々厚めのラップがかかっている、という割と家庭的な感じ。しかもスーパーよりも量が多めに入っているのです。

これらのお惣菜をまとめて5パック購入したりすると、合計が1万1000ウォンのときに、「1万ウォン(約1000円)でいいですよ」とおまけしてくれることもよくあります。

スーパーで惣菜を買うよりも量が少し多めで、値段も安いのが魅力なのです。これまで観光客が買って食べるには適していませんでしたが、これが通仁市場のお弁当カフェの存在により、気軽にお惣菜を味わえるようになったのです。

通仁市場のお弁当カフェ

さて、さっそくお弁当カフェを体験してみましょう。市場の中央には「顧客満足センター」という名の事務所があります。この2階にお食事処・カフェがあります。

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そこへ行く前にまずは5,000ウォン(約500円)を払い、お弁当箱とコイン10枚を受け取ります。コインは昔の銅銭のように、中央に穴があいています。

コイン1枚で50円分くらいの感覚。コインと容器をもって市場を歩いて回り、食べたいものを探しましょう!購入できるのは、お弁当カフェに加盟している店舗のみなのでご注意を!そのコインを使って購入すると、容器に惣菜を入れてくれます。

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惣菜の種類もさまざま。トッポッキや、チャプチェなど日本でもおなじみの韓国料理から、ナムルやサラダなどの野菜類、マンドゥ(餃子)、ティギム(天ぷら)、甘辛チキン、カツなどの揚げ物類などなど。

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コイン1枚のものから2枚分のおかずもあります。楽しみながらお惣菜を選んでみましょう。

そして最後に顧客満足センターの2階へ行き、ご飯とスープがそれぞれ2枚ずつで購入します。これでお弁当完成!いただきます!写真はおかず8枚分、2枚でご飯を購入したので、お惣菜がたっぷりです!

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このようなユニークな取り組みは過去記事でもご紹介しています。参考:韓国のユニークな市場へ

2016年、再び通仁市場を訪れてみた

2016年に再び、通仁市場を訪れてみたところ、お弁当カフェの取り組みは定着しており、顧客満足センターの2階だけでは足りず、地下にも食事スペースができていました。

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購入できるものも、市場で販売されていた惣菜のみならず、カップに入ったご飯や麺類、デザートのフルーツ類まで販売されるようになったのです。

下町の市場、地元密着の市場、というだけあって、市場のアジュンマ(「おばさん」を親しみをこめていう言葉)たちもサービス精神旺盛な人が多いのです。サービスで大盛にしてくれることさえあります。

観光地化しはじめた、という人もいますが、市場の人は観光客慣れしているとはいえ、片言の英語を使って会話をする程度なので、地元感がいっぱいです。

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上の写真はコインすべてを惣菜に使ったもの。チャプチェ(春雨)はコインを2枚ですが、どうやらサービスしてくれたようで、大盛りになりました。

惣菜を購入するには2枚使わなければならないものが多く、ご飯は2枚、汁物2枚とした場合、残りの6枚でお弁当箱をいっぱいにするのは、少々厳しいところ。

もちろんひとり旅の方でも大丈夫ですが、2、3人で訪れて、おかずを分け合って食べたほうがより楽しめるはずです。

通仁市場のキルム・トッポッキ

通仁市場には他の市場とも同じように、様々なお店がありますが、以前から有名なお店が油トッポッキ(キルムトッポッキ、기름떡뽁이)。トッポッキといえば、元々は宮中料理の一つでしたが、韓国の代表的なおやつとして親しまれている食べもの。

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一般的にはお餅を甘辛く煮るようにして作りますが、この市場で50年以上の伝統をもつ、トッポッキは少し異なります。丸い鉄板の上で、トッポッキを油で炒めているのです。醤油味、コチュジャン味の二つがあります。

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お客さんの前で優しそうなアジュンマ(おばさん)が炒めてくれて、市場のカウンターに座り、食べることができます。

当初、お弁当カフェには加盟していませんでしたが、2016年現在は加盟し、コイン2枚(1,000ウォン相当)で味見できるようになりました。

休日の通仁市場

通仁市場は、とくに休日になるとお弁当カフェはもちろん、市民の憩いの場としてにぎわいます。屋根がついた東屋のようなところで、地元の買い物客が休んでいたりとそれぞれの時間を過ごしています。

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写真は市場の西側の入口。この出口からさらに西の奥のほうへと進むと、西村の飲食店通り、住宅街を抜けて、水聲洞渓谷へと続きます。

●通仁市場へのアクセス
地下鉄3号線景福宮駅2番出口徒歩7~8分。

そして西村(ソチョン)、水聲洞(スソンドン)渓谷の散策へ

通仁市場で食事をした後は、西村を散策しても面白いでしょう。さらに西側に歩いていくと、路地は閑静な住宅街とも思える雰囲気でありながらも、その1階にはこぢんまりとしたカフェや飲食店が並び、商圏が形成されています。

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さらに奥に進むと、韓国を代表する近現代の詩人・尹東柱(ユンドンジュ)が下宿した場所があり、その奥に進むと、水聲洞(スソンドン)渓谷があります。市場からは歩いて15分くらいでしょうか。

水聲洞(スソンドン)渓谷は、ソウルの内四山である、仁王山(インワンサン)の麓に位置し、朝鮮時代の水墨画にも描かれたという風光明媚な場所。ソウルには、こんなオアシスのようなスポットがあるのです。

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このあたりはソウルの街の中心を流れる清渓川の源流にもなっています。この水聲洞(スソンドン)渓谷の脇には近年まで古いアパートがあったそうですが、景観の面もあり、取り壊されたといいます。

通仁市場から市場散策を!

西村(ソチョン)にある、通仁市場。「お弁当カフェ」の効果もあり、ソウルの人気市場として注目されるまでに。

地元の雰囲気を感じながら、飲食を楽しみたい方は、景福宮駅そばにある「世宗マウル飲食文化通り」もおすすめ。ここにはチヂミやククス(麺)など安くて庶民的な飲食店が多いのが特徴です。

ソウル・穴場マッコリ紀行~世宗文化マウル飲食通り、体府洞チャンチチプ

またソウルで最も観光客に人気なのは、南大門市場ですが、より地元らしい雰囲気を感じるなら広蔵市場がよいでしょう。ここでは夕方から夜にかけて、お酒を飲みながら屋台で食事が楽しめます。

広蔵市場のグルメ、これでバッチリ完全制覇!?

通仁市場を市場観光の手始めとして訪れ、他の市場もぜひ回っていただければと思います。




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トム・ハングルの韓国旅行ひとこと
西村(ソチョン)にはここで紹介した以外にも、路地裏散策が楽しめる場所です。韓国の伝統家屋を利用したカフェや、昔ながらの雰囲気の書店、地元に定着したベーカリーなど様々な場所があり、レトロ感が好きな方は1日散策していても飽きないでしょう。

朝鮮王朝がソウルに建設されたころに造られた、土地と穀物の神を祀る「社稷壇(サジクダン)」もまた文化観光スポットのひとつです。



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