これは誇大広告!?本当の江原道の人口は?~「300万江原道民」の謎に迫る
 吉村剛史(トム・ハングル)
 2017/04/25 改:2017/12/08 

初春のレンギョウや桜の花が咲く季節、ソウルから通勤電車に揺られること約1時間強、江原道・春川へ。初春とはいえ、冬のひんやりとした空気が残るこの時期。江原道らしい澄んだ空気に、青空が美しく感じられました。

●春川明洞タッカルビ通り
春川駅からバスで10分ほどのところに、春川の中心街、春川明洞(ミョンドン)があります。中心街にはドラマ『冬のソナタ』で世界的に人気を集めたヨン様ことペ・ヨンジュンや、チェ・ジウの像があり、写真を撮ろうと観光客が群がります。


[ペ・ヨンジュンとチェ・ジウ]

お昼時になるとタッカルビの聖地ともいえる、春川明洞タッカルビ通りにはちらほらと客が集まってくるのです。

春川明洞タッカルビ通りの両側にはタッカルビ専門店がひしめきあっています。ここでは、店の混雑状況にもよると思いますが、多くの店では1人前から注文可能で、ひとりで訪れても食事ができます。


[タッカルビ]

タッカルビは300gで10,000ウォン(約1,000円)。ここにチーズをトッピングしてもらえば、今流行のチーズタッカルビができあがります。

●江原道庁へ

[江原道庁]

タッカルビを食した後、食後の散歩に出かけます。明洞タッカルビ通りから数百メートルのところに位置する江原道庁。中央には、来年(2018年)に開催される、平昌オリンピックのポスターが掲げられています。

正面から見て、この建物の左隣に位置するのが、江原道議会。その江原道議会の建物に、垂れ幕が掲げられています。そこにはこんな文言が!


[江原道議会の右に垂れ幕]

「江原道の発展を促進する2018年平昌冬季オリンピック!300万の道民と一緒に成功開催します!」
강원도 발전을 앞당기는 2018평창동계 올링픽! 300만 도민과 함께 반드시 성공개최 하겠습니다.

「300万の道民」という箇所。この表現に引っかかりました。「江原道に300万人の道民がいたかな?」とこの瞬間思ったのです。韓国のなかでも江原道に最も関心が高い私は、江原道の人口は約156万人と記憶していたのですが、ここでもう一度確認することにしました。


[画像:江原道庁ホームページより引用(2017年4月25日閲覧)]

江原道のホームページに記載されている人口は、1,564,615人(外国人含む)。なんと300万人の半分しかいないのです。これは誇大広告か!?

●韓国の人口は?
ちなみに韓国の人口は約5124万人(2016年現在)。うち江原道の人口は約156万人です。北朝鮮(北韓)のエリアを除いた江原道の面積は、大韓民国統治下の17%にあたりますが、人口は全体のわずか約3%なのです。

人口が少ない反面、自然に豊かな江原道は、観光にも非常に魅力的な場所といえます。雪岳山(ソラクサン)や五台山(オデサン)といった名峰がそびえ、平昌(ピョンチャン)周辺では冬になれば、スキーを楽しむことができ、春川や華川などにあるダムでは水上レジャーも楽しめる、そんな地域です。

●南北は分断されている!
江原道は、京畿道(キョンギド)とともに南北を分断されている地域であります。そこで「300万人の江原道民」の謎を解くために、北朝鮮(北韓)地域の江原道の人口を調べてみました。江原道(北)の人口は2008年現在、約147万人なのです!


[江原道(北・南)の地図-線は目安としてお考えください]

江原道(南)の人口の約156万人+江原道(北)の人口の約147万人、「これで300万人超える!」。ここで答えが出たかのように思い、早合点してしまいました。

しかし江原道が南北に分断されていることは事実。鉄原郡や、高城郡は軍事境界線の向こう側でも同じ地名が使われています。


[鉄原郡・白馬高地駅の鉄道分断地点(京元線)]

江原道(北)には金剛山という名峰があり、1998年から2008年までは韓国人や外国人にも開放されていました。また、北の東海岸沿いには元山(ウォンサン)という都市があり、分断前には現・ソウル(龍山)からの京元線として、鉄道がつながっていました。

いずれにせよ、朝鮮半島が本来ひとつの国であり、「南北の江原道を合わせれば、江原道には300万人住んでいる」ということは決して嘘ではなく、事実に近い数字といえます。

●「300万内外江原道民」
南北の人口を確認して、早合点してしまいましたが、その後Web記事で「300万内外江原道民」という文言を見つけたのです。「内外」という表現では「外」に道民がいる、ということになるわけですから、江原道(北)も「外」ではないはずです。そこで江原道庁に電話をして問い合わせてみることにしました。


[垂れ幕]

私「江原道議会の垂れ幕に「300万人の江原道民」とありましたが、実際は江原道の人口は150万人程度ですよね、これはどういう意味ですか?北の人口も含むということですか?」

職員:「300万の道民とは、江原道の人口に加え、江原道で生まれ、現在はほかの地域に住むなど、江原道に関連する人たちも含みます。象徴的な意味としての数字です。」

これで疑問が解決!とはいえ、300万人の道民という表現は、江原道出身者等の「道民会」の数字も含んでいるということになり、誇大広告な感じもするわけです。

●「江原道500万人を宣言!?」
今年4月、とある江原道議員の発言で「300万の内外道民と150万の北江原道を合わせ、これからは江原道500万人時代を宣言しパイを広げ」る、とありました(出典:NEWS1)。

江原道(北)を加えても、この発言をそのまま計算した場合、450万人。500万人でもかなり誇張した感はありますが、それだけ力を込めた表現ともいえるでしょう。

それならばいっそのこと、ここに国内観光客や外国人観光客も加え、「これからは江原道1000万人時代、さらには1500万人時代」と銘打ってもよいのではないでしょうか!

※この記事は「江原道公式ブログ」に寄稿したものです。(2017/4)




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