江原道への「路(みち)」に思いを馳せて~ソウルから江原道へのアクセス考
 吉村剛史(トム・ハングル)
 2017/10/24 改:2019/10/02 

韓国のなかで最も秘境といえる江原道(カンウォンド)。高速道路網が発達した今では、ソウルから東海岸まで最短で約2時間。ほかの地方と比較した場合でも、それほど「遠い場所」というわけではありません。

とはいえソウル・清涼里駅からムグンファ号に乗り、ゆったりとした座席に座って、東海岸の江陵(カンヌン)まで訪れると、なんと約6時間を要します。


[江陵・正東津の海を臨む]

しかし2018年の冬季五輪開催にともなって路線が新設され、2月の五輪期間中のみ仁川空港-江陵駅へのKTXが運行。その後は上鳳(サンボン、상봉)駅からの運行が検討されており、その場合、上鳳―江陵が1時間6分で結ばれるのです。参考:朝鮮日報(2017年1月4日)

ここまで「清涼里」「上鳳」といったソウルの地名が出てきましたが、今回はソウルから江原道への行き方をお伝えするとともに、江原道がソウルの玄関口とどのようにつながっているのか、そのルートにもフォーカスしてお伝えします。

■江原道へのアクセス(鉄道編)

●江原道と鉄道でつながる清涼里駅
列車で江原道を訪れる場合、おもに清涼里駅を利用します。清涼里駅は、ソウル、龍山、永登浦とともに主要ターミナル駅でもあります。地下鉄1号線や京畿・中央線が通っており、都心からのアクセスにも便利な駅なのです。

2010年に新駅舎が開業した清涼里駅。駅の外見はほかの駅にも似たガラス張りですが、清涼里駅構内は、広々として見通しがよくて気持ちがよいのです。

ソウル駅に比べて人が少ないのもよいところ。私は列車に乗らずとも、清涼里駅の待合室でゆっくり過ごすのが好きです。


[清涼里駅]

清涼里駅の近くには様々な農産物が、手ごろな価格で販売されている京東市場があります。この京東市場はもともと、京畿道や江原道から農産物を売りに来た人たちが集まり、自然と市が形成されていった場所。鉄道を介して、地方から人が流れてきたことが読み取れます。


[京東市場]

屋台や露店が並んでいる清涼里駅前。その大半はどこにでもあるようなものですが、一度だけ”江原道名物・メミルジョン(메밀전)”と書かれてたものを目にしたことがあります。心なしか江原道との距離の近さがうかがえるのです。

ちなみに清涼里は集娼街があることでも有名でした。最近ではだいぶ撤去が進んでおり、今後高層ビルが建設される予定だとか。この場所がより発展すれば、駅をきっかけに江原道へ訪れる人も増えるのではないか、という期待もできます。

観光客としてのメリットは、駅ビルにはロッテマートやロッテ百貨店があること。地方を訪れた帰りにおみやげを購入することができたり、体力に余裕があれば映画館で韓国映画を見たりしてもよいかもしれません。

◆ムグンファ号(무궁화호)
清涼里駅から江原道方面へは主にムグンファ号に乗車します。ムグンファ号の魅力は座席が広いこと。

車両は古めですが、多少体が大きくても隣の人とぶつからないのが、列車旅の良さ。江原道の場合はバスよりも時間がかかる場所が多いですが、その点は高速バスより快適です!


[ムグンファ号のカフェカー]

清涼里駅からは、原州、旌善、太白、江陵方面へアクセスできます(釜山・釜田駅への夜行列車も出ているのですが・・・)。料金は清涼里-江陵(正東津)まで21,600ウォン(約2160円)ですが、およそ6時間かかります。

オリンピック終了後に江陵を訪れる場合、高速鉄道で訪れたほうが早くなりそうですが、東海岸に日の出を見るために夜行列車に乗り込むならよいかもしれません。

◆ITX‐青春(京春線・急行列車)
ITX‐青春は京春線を走ります。通勤列車の路線を走るため、日本の感覚だと郊外に行く私鉄の特急列車といったところでしょうか。

ちなみに春川行きのITX‐青春に乗ると、南怡島の玄関口の加平や、タッカルビ通りにも近い春川までアクセス可能。料金は清涼里-春川間は6,400ウォン(約640円)で55分。もっと安く行きたい方は、上鳳駅から普通列車で行きましょう。


[ITX‐青春]

切符の購入は駅の外の券売機で買いますが、ホーム上で交通カードを当ててITX‐青春に乗り込むこともできます。その場合は交通カードの残額に注意しましょう。

◆上鳳駅から普通列車で
列車で江原道を訪れる場合、もっとも安く行けるのが京春線の普通列車。清涼里駅から3駅の上鳳(サンボン、상봉)駅からは春川行きの京春線が出ています。(本来は隣の忘憂駅が起点ですが、上鳳駅まで乗り入れ)。

ちなみに上鳳駅から終点春川駅までは普通列車で約80分。料金はバスの半額以下、2,600ウォン(約260円)。これはかなりお得です。


[上鳳駅]

●江原道へ続く「6番国道」の存在
「上鳳」という場所をもう少し掘り下げておきましょう。上鳳洞は、中浪(チュンナン、중랑)区の中心街ともいえる街です。この上鳳駅前を通る道路は「6番国道」と呼ばれている道路。cf.韓国・東海岸「7番国道」沿いの刺身街道

この「6番国道」は仁川駅が起点になっており、富川市を経由して、ソウル市内へと入っていきます。

ソウルへ何度も訪れている方はよく知っているであろう、弘大や新村、鍾路の大通りもこの「6番国道」にあたります。

さらに東大門を抜けて清涼里駅前を通ったあと、回基駅の南側の道へとそれます。そこから中浪川を渡って中浪駅、上鳳駅、忘憂駅へと続くのです。


[6番国道、上鳳駅付近。右手にコストコ]

ちなみに「6番国道」の終点は、江原道・江陵(カンヌン)市。ソウルを横断したあと南漢江沿いを通って京畿道を抜け、江原道の横城や平昌など山を越え…。なんと全長約280kmの道路なのです。


[6番国道]

これでイメージが湧くでしょうか。つまり「6番国道」は、仁川から江陵へと朝鮮半島を横断する道なのです。

忘憂駅のすぐ前にある上鳳ターミナルからも江原道方面へのアクセスが可能。つまり上鳳ターミナルが江原道とつながる「6番国道」沿いに位置するのは、利便性が理由なのだのだと想像できます。

■江原道へのアクセス(バス編)
オリンピック後に高速鉄道が通るエリアや、春川方面以外の多くの都市はバスが便利。高速バスならソウルから東海岸の束草まで約2時間でアクセス可能です。

●東ソウルターミナル
東ソウルバスターミナルは、地下鉄2号線の江辺駅近くに位置するターミナル。漢江に面した場所に位置し、すぐ近くに高速道路のインターチェンジがあります。江原道方面のバスはほとんどここが出発点。

束草、江陵、原州など比較的大きな街へは直行便が多く出ていますが、小さな都市へはいくつかのターミナルを回るなど迂回していく場合もあり、事前に時間をしっかり調べておくことをおすすめします。


[東ソウルバスターミナル]

ちなみに駅前のビルには、電気商店街のテクノマートがあります。かつては携帯電話はカメラなどはここで入手可能。韓国の電気製品を手に入れたいときには、立ち寄ってみるとよいでしょう。

●高速ターミナル
江南にある高速ターミナルからは、原州行きのほか、江陵、束草、東海など、主に東海岸の路線への高速バスが出ています。こちらも本数は多めです。


[高速ターミナル]

江南ターミナルは買い物のための施設が充実。新世界百貨店がありますが、江南ターミナル地下商店街(GOTO MALL)は、ファッションスポットとしても有名ですし、食事する場所も多いので便利です。

帰りはこちらに到着するようにすれば、いろいろと楽しめそうです。

●上鳳ターミナル(忘憂駅近く、上鳳駅からも徒歩圏内)
上鳳ターミナルは、ソウル北東部のバスターミナル。京義・中央線、忘憂(マンウ)駅から歩いて3分ほどのところにあります。

こちらのターミナルは、原州行きが頻繁に出ていますが、そのほかの都市へは本数が少ないのがネック。実際に観光客が利用する可能性は低いでしょう。


[上鳳ターミナル]

とはいえ江原道からの帰り、東大門や清涼里方面で宿泊する場合は、上鳳ターミナルに到着するバスを利用するのもよいのかも。乗るかどうかは、出発時刻の条件によると思います。

ちなみに上鳳ターミナルの向かい側には大型スーパーのE-martがあり、近くにはコストコ(COSTCO)もあるので、買い物にも便利。

■江原道への旅は「路」のつながりも意識して
ソウルから江原道への旅。「どこに行くか」という「点」でとらえがちですが、これまで多くの人たちが移動してきた行程にまで目を向けると、人の流れが見えてきます。

「どうやって行くか」を考えるのも旅の楽しさですが、帰りの手段は別のルートをとるのも面白いところ。到着するソウルの町の利便性まで意識して、交通手段を考えていただけたら、と思うのです。

※この記事は『江原道公式ブログ』に掲載されました。

参考記事:これから話題の平昌、アクセス・行き方はこれでバッチリ!




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