世界遺産のお祭りが共通点!?~江原道江陵市と埼玉県秩父市は姉妹都市
 吉村剛史(トム・ハングル)
 2017/11/25 改:2019/09/20 

江陵(カンヌン)は江原道・東海岸最大の都市で、人口は約21万3000人。江原道の「江」にあたり、朝鮮時代の歴史的建造物が残る町。南北に連なる海岸線には海水浴場が多く、潟湖(ラグーン)の鏡浦湖は、サントリーの焼酎「鏡月」の由来となった場所でもあります。エリア情報:江陵


[江陵・鏡浦台から鏡浦湖を望む]

2018年に平昌五輪・パラリンピックのスケート競技が開催されることでも注目を集めている江陵市。そんな江陵市と1983年から姉妹都市を締結している自治体があります。それは埼玉県秩父市です。

●秩父市はどんなところ?
埼玉県西部にある秩父市は人口約6万3000人。山々に囲まれた秩父では近世以降、養蚕が盛んで絹織が地場産業として発達。その製品は「秩父銘仙」とよばれ、国指定の伝統的工芸品となっています。


[春の羊山公園から武甲山を望む]

秩父にはなだらかな稜線をもつ山々が多い一方、ひときわ目立つのはゴツゴツしながらも、荘厳にそびえる武甲山。セメントの原料となる石灰岩の採掘が行われているため、周辺にはセメント工場が多いのです。

江陵市と秩父市にはそれぞれ「江陵端午祭」「秩父夜祭」という伝統的なお祭りがあることが共通しています。12月には、秩父の冬の風物詩ともいえる「秩父夜祭」が開催されるのです。そこで今回は、江陵の姉妹都市のお祭りを紹介します。

●秩父夜祭はユネスコ無形文化遺産に登録!
秩父周辺は「年間300日がお祭り」といわれるほど、お祭りが盛んな地域。そのなかでも毎年12月2日、3日に行われる秩父夜祭がいちばんの盛り上がりを見せるイベント。


[秩父夜祭の様子]

2016年には「秩父祭の屋台行事と神楽」がユネスコ無形文化遺産に登録。韓国・江陵市の「江陵端午祭」(2005年登録)とともに、それぞれ姉妹都市のお祭りが世界的に認知されるようになりました。

2日は前夜祭にあたる宵宮、3日は大祭が行われ、それぞれ屋台の曳き回しが行われます。たくさんの提灯を纏った屋台(山車)は、氷点下にもおよぶ真冬の夜の街を照らし、雑踏のなかで掛け声が響き渡ります。

路上や駅前にはたくさんの出店が街を飾り、両日ともに打ち上げられる花火が夜空を彩り、2016年は過去最高となる32万人が来場したとのことです。

ちなみに現在の江陵市長も「秩父夜祭」にも訪れたことがあるのだそう。しかし親善協会の方はこのシーズンに訪れるのが難しく、「秩父まつり会館」に立ち寄ったのだとか。

もしこの記事を読んだ方は、ぜひ秩父へ出かけてほしいと思いますが、「12月には行けない!」という方は、秩父駅近くの「秩父まつり会館」へ立ち寄ってみましょう。


[秩父まつり会館の屋台と笠鉾の展示]

会館の3Dシアターは必見!屋台や笠鉾が展示され、音声や映像とともに、お祭りの雰囲気を感じることができます。

●2016年の江陵端午祭ではブース出展も
江陵端午祭は旧暦5月5日の端午に行われ、韓国最大規模の伝統祭り。豊作を祈願するために行われるお祭りですが、独創性、芸術性などが評価されユネスコ世界遺産に登録されました。


[「クッ(굿)」と呼ばれるムーダンの祭儀]

2016年の江陵端午祭では、秩父市がブース出展を行ったとのこと。そこではどのようなものが現地の方に受け入れられたのでしょうか。秩父市役所市民生活課の新井様を通して、市役所の職員の方にご回答を頂いた話をもとにまとめました。

「秩父銘仙」の小物類は、色合いが地味なこともあり、評判は今一つだったよう。私が思うに、韓国人は派手目な原色系が好きな人が多い気はしますが、そういったこともあるのかもしれません。

一方で「けん玉」のような体験型の催しは盛況だったといいます。そしてお菓子類は「秩父カエデ糖」や「ちちぶ太白いも」を使った商品が完売したのだとか!

そこで私は埼玉・秩父のアンテナショップに立ち寄り、「秩父カエデ糖」を使ったお菓子を入手!「秩父カエデ糖」は、楓の樹液を煮詰めて作ったシロップで、ポリフェノールがたくさん含まれているのだとか。

「ちちぶまゆ(3個、130円)」はふわふわしたマシュマロのなかにメイプルシロップが入っており、上品な甘さが際立ちます。「すのうぼうる(8個、380円)」は、茶菓子としても最適!サクッとした触感ですが、口のなかで程よい甘さが広がるお菓子です。


[秩父カエデ糖を使ったお菓子の例]

これらのお話は「韓国の方にどのようなお土産が喜ばれるのか」という参考にもなります。もちろん真心を込めたプレゼントは嬉しいものですが、秩父に限らず、丁寧に作り込まれた地元の銘菓はきっと喜ばれることでしょう。

また、韓国の方が日本に遊びに来た際には、「昔ながらの遊び」を体験してもらうのもよいかもしれません。

●秩父の最近の観光事情
秩父へは東京・池袋から西武鉄道の特急レッドアロー号で約1時間30分。西武秩父駅前の仲見世通りは、昨年リニューアルされ、駅前温泉「祭の湯」が開業。4月上旬、羊山公園の一面に咲き誇る芝桜は壮観です。


[秩父の新たなスポット・祭の湯]

秩父鉄道に乗り換え、三峰口方面に足を延ばせば、パワースポットとしても知られる三峰神社があります。境内は杉の大木に囲まれていて、樹齢800年ほどのご神木もあるのだとか。

ちなみに江陵市の方々が訪れた際には「こんな大木は江陵にはない」と驚かれたのだそう。また秩父を訪れたときに召し上がった「生酒」も好評だったようです。

そしてここ最近、秩父市はアニメの聖地としても注目を集めており、コスプレを身にまとった若者が写真を撮りに訪れるのだとか・・・。

●秩父にはない江陵の魅力とは?
そして秩父周辺にお住まいの方が、江陵市を訪れるならば、秩父市にはない「海」が魅力といえるでしょう(もっとも埼玉県には海がないのですが・・・)

イカが有名で活気あふれる注文津水産市場、時代劇ドラマにも登場する朝鮮時代の建造物「烏竹軒」や「船橋荘」といった観光名所があります。

江陵のグルメなら海産物はもちろん、海水のにがりを使った「草堂純豆腐」などもきっと好まれるのではないかと思います。江原道公式ブログでは、数々の名所が紹介されています。

●双方の発展、交流の進展を願って
最後になりますが、今回のブログ執筆にあたっては、秩父市役所の職員の方にご協力を頂いたことを改めて感謝申し上げます。

秩父市、江陵市のさらなる発展、双方への観光客の往来が活発化することを願って、この記事の結びとします。

取材協力・写真提供:秩父市役所




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